結論:歩くだけより、「歩きながら数える」
結論から言うと、認知症予防を目的に体を動かすなら、歩くだけで終わらせず、同時に頭も使うほうが効率的です。これを「デュアルタスク(二重課題)」と呼びます。
やり方はとても簡単で、歩きながら、100から3ずつ引いていく。これだけです。100、97、94、91……。道具もいりませんし、お金もかかりません。
ただし、ひとつだけ大事な注意があります。ながら歩きは、転びやすくなります。 安全のための約束は記事の中ほどにまとめましたので、やってみる前に必ず読んでください。
なぜ「ながら」がいいのか
歩くこと自体は、もちろん体にいい運動です。ただ、毎日歩いている方にとって、歩行はすでに「慣れた動作」になっています。
慣れた動作は、ほとんど考えなくてもできてしまいます。つまり、体は動いていても、脳はあまり働いていない状態です。
そこに「考える」を足すとどうなるか。足を運びながら、数を覚えておいて、引き算をして、次の数を思い出す。体と脳を同時に使うことになります。
そしてこれは、実際の生活にとても近い動きです。私たちは外を歩くとき、信号を見て、人を避けて、買うものを思い出しながら歩いています。ふだんの生活そのものが、デュアルタスクなのです。
だからこそ、練習する価値があります。歩行そのものの安定にもつながると考えられています。
やり方は3つ。好きなものでかまいません
①100から3ずつ引いていく
いちばん定番の方法です。100、97、94、91、88……と、歩きながら声に出して数えます。
「簡単すぎる」と感じたら7ずつにしてみてください。100、93、86、79……。急に難しくなるはずです。
間違えても気にしないでください。正解することが目的ではなく、考えながら歩くことが目的です。
②しりとりをしながら歩く
ご家族やお友だちと一緒に歩くなら、こちらのほうが楽しく続きます。
慣れてきたら「食べ物だけ」「駅の名前だけ」とテーマを決めると、ぐっと頭を使います。会話そのものも脳への刺激になるので、一石二鳥です。
③座ったまま、足踏みしながら数える
ふらつきがある方、歩くことに不安がある方は、こちらから始めてください。
椅子に深く座って、その場で足踏みをしながら、100から3ずつ引いていく。これでも立派な二重課題です。転ぶ心配がないぶん、頭を使うほうに集中できます。
「歩かないと意味がない」ということはありません。朝の体操のついでに1分だけ、でも十分です。
やる前に。転ばないための3つの約束
ここがこの記事でいちばん大事なところです。
考えごとをしながら歩くと、足元への注意が減ります。 これは若い方でも同じで、スマートフォンを見ながら歩いてぶつかるのと同じ理屈です。せっかく認知症を予防しようとして、転んで骨折してしまっては元も子もありません。
- 慣れた、安全な場所でだけやる。 自宅の廊下や、よく知っている平らな道で。初めての道、人の多い場所、段差や坂のあるところではやらないでください
- 外では絶対にやらない時間帯を決める。 暗くなってから、雨の日、路面が濡れているときは普通に歩いてください
- ふらついたら、すぐにやめる。 数えるのをやめて、歩くことだけに戻してください。少しでも不安があれば、③の座ってやる方法に切り替えましょう
転倒の防ぎ方そのものについては転倒予防の極意5選にまとめています。あわせて読んでみてください。
どれくらいやればいいのか
毎日でなくてかまいません。週に2〜3回、1回5分からで十分です。
いつもの散歩の、最後の5分だけ「ながら」にする。この形がいちばん続きます。最初から全部を二重課題にすると疲れてしまいますし、注意も続きません。
大事なのは強度より続くことです。「今日は数えるのが面倒だな」という日は、普通に歩いてください。それでかまいません。
運動だけが認知症予防ではありません
最後にひとつ、お伝えしておきたいことがあります。
世界中の研究をまとめたLancet委員会の2024年報告では、認知症に関わる「変えられる要因」が14挙げられています。そのなかで最も大きいとされているのは、運動不足ではなく「難聴」です。
聞こえにくいと会話が減り、外に出る機会が減り、脳への刺激が減っていきます。聞き返しが増えてきた方は、聞こえと認知症の関係のほうを先に読んでいただくほうがよいかもしれません。
見え方も同じです。白内障は手術で治せますし、めがねの度が合っているかどうかも見直す価値があります。
動く・聞こえる・見える・話す。 この4つが保たれているか、ときどき振り返ってみてください。
まとめ
- 認知症予防の運動は、歩きながら頭も使うのが効率的
- やり方は100から3ずつ引く/しりとり/座って足踏みの3つ
- 慣れた安全な場所で。 ふらついたらすぐやめる
- 週2〜3回、1回5分から。続くことがいちばん大事
- 運動以外では聞こえと見え方のほうが影響は大きい
まずは今日の散歩の最後の5分、100から3ずつ引きながら歩いてみてください。思ったより難しいはずです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。
※「これをやれば認知症にならない」という話ではありません。リスクを下げられる可能性がある、という内容です。
※紹介している研究には観察研究が含まれ、因果関係が証明されたものではありません。
※めまい・ふらつきのある方、転倒したことのある方は、始める前に主治医やリハビリ担当者にご相談ください。
参考:Lancet委員会「認知症の予防・介入・ケア(2024年報告)」/日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン」/厚生労働省(認知症施策)

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