脈の乱れは自分で見つけられる|手首で15秒、心房細動のセルフチェック

脳卒中予防の極意5選 ふくろう先生 生活習慣病・疾病別対策

結論:手首に指を当てて、15秒だけ

結論から言うと、脳卒中を防ぐためにいちばん手軽で、いちばん見落とされているのが「自分で脈を触ること」です。手首に指を当てて15秒。見るのは速さではなく、リズムが一定かどうかだけです。

なぜこれが大切なのか。脳梗塞の原因のひとつに「心房細動」という不整脈があり、これは半数近くの方で自覚症状がないと報告されています。症状がないので、本人も家族も気づけません。けれど、脈を触れば分かることがあります。そして見つかれば、薬で脳梗塞をかなり防げるようになります。

なぜ「脈」を見るのか

心房細動は、心臓の上の部屋が細かく震えてしまい、血液がうまく流れなくなる状態です。流れがよどむと、心臓の中で血のかたまりができることがあります。それが血流に乗って脳の血管に詰まると、脳梗塞になります。

やっかいなのは、この不整脈が出たり出なかったりすることです。健康診断の心電図はほんの数十秒。そのとき出ていなければ「異常なし」になります。だからこそ、日ごろ自分で触っておく意味があります。

リハビリの現場でも、「そういえば最近、脈が飛ぶ感じがあった」と後から言われることがよくあります。気づける機会は、あったのです。

検脈のやり方

①手首の親指側に、指を3本そえる

手のひらを上に向けて、手首の親指側のくぼみに、反対の手の人差し指・中指・薬指をそっと当てます。親指は使いません。親指には自分の脈があるので、分かりにくくなります。

強く押さえる必要はありません。皮膚に軽く触れるくらいでトン、トン、と伝わってきます。

②15秒だけ数える

時計の秒針を見ながら15秒。数えた回数を4倍すれば、1分間の脈拍数になります。おおよそ1分間に50〜100回が目安です。

毎日でなくて構いません。朝の習慣のついでに、週に何回か触る程度で十分です。椅子に座って、ひと息ついてから測ってください。

③見るのは速さより「リズム」

いちばん大事なのはここです。回数そのものより、トン、トン、トンと一定の間隔で来るかどうかを見てください。

  • トン、トン、トン……と等間隔 → ふだんどおり
  • トン、トトン、……トン、とバラバラ → 心房細動の可能性
  • ときどき一拍抜ける感じがある → 一度医師に相談を

「規則正しくない規則正しさ」という言い方をすることがあります。速いとか遅いとかではなく、間隔が読めないのが心房細動の特徴です。

こんなときは、早めに受診を

  • 脈のリズムがバラバラな日が、何度か続く
  • 動悸や息切れ、めまいをともなう
  • 脈拍が1分間に50回を下回る、または120回を超える

受診の際は「いつ、どんなふうだったか」をメモしておくと診断の助けになります。スマートフォンのメモで構いません。なお、家庭用の血圧計の多くには不整脈を知らせるマークがついています。説明書を一度確認してみてください。

もうひとつの習慣:血圧は「家で、朝」測る

病院の血圧より、家の血圧のほうが当てになる

意外に思われるかもしれませんが、将来の脳卒中を予測する力は、病院で測った血圧より家庭で測った血圧のほうが高いとされています。病院では緊張して上がる方もいれば、反対に家でだけ高い方もいるからです。

そして基準値も違います。病院での基準が140/90なのに対し、家庭血圧の基準は135/85。家で測るときのほうが、低い数字が求められます。「病院では大丈夫と言われたのに」という方ほど、一度家で測ってみる価値があります。

測り方の3つのコツ

  • 朝、起きて1時間以内。トイレをすませ、朝の薬を飲む前、朝食の前に
  • 座って1〜2分休んでから。カフを心臓の高さに合わせる
  • 2回測って平均をとる。1回目が高く出ることはよくあります

毎日続けなくても構いません。1週間のうち何日か測って、その平均を見てください。1日だけ高かったことより、ならしてどのあたりかが大事です。

血圧そのものを下げる生活習慣については高血圧は生活習慣で下がる|今日から実践できる5つの対策にまとめています。

症状が消えても、救急車を呼んでください

最後に、いちばん覚えて帰っていただきたいことです。

手がしびれた。ろれつが回らなかった。片目が見えにくかった。でも5分で治った——このとき、多くの方が様子を見てしまいます。

これは「一過性脳虚血発作」といって、本格的な脳梗塞の前ぶれであることがあります。治ったからこそ、すぐに受診してください。治まったことは、安心の材料ではありません。

そして、こんな症状が出たら「FAST」を思い出してください。

  • F(Face・顔)……顔の片側が下がる、笑うと左右で差が出る
  • A(Arm・腕)……両手を前に上げると、片方だけ下がってくる
  • S(Speech・言葉)……ろれつが回らない、言葉が出てこない
  • T(Time・時間)……すぐ119番。そして「何時から」を覚えておく

治療には時間の制限があります。「何時から症状が出たか」が分からないと、使える治療が限られてしまいます。迷ったら呼んでいただいて大丈夫です。

まとめ

  • 脈は手首に15秒。速さよりリズムが一定かを見る
  • 心房細動は半数近くが無症状。自分で触るから気づける
  • 血圧は家で、朝、2回測って平均。基準は135/85
  • 症状が消えても受診。おかしいと思ったらFASTと119番

どれも、今日から道具なしで始められることばかりです。まずは今、手首に指を当ててみてください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。
※血圧のお薬は、絶対にご自分の判断で中止・減量しないでください。「下がったから大丈夫」が最も危険です。減らす相談は必ず主治医へ。
※救急相談「#7119」は地域によって利用できない場合があります。お住まいの地域で使えるか、あらかじめご確認ください。

参考:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン」/日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」/日本循環器学会(心房細動)/日本脳卒中協会

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