朝、起きてすぐに体が動かない。歩き出しの一歩がぎこちない。——それは年齢のせいだけではなく、寝ているあいだに体が固まっているだけかもしれません。この記事では、朝ごはんの前でも後でもできる「朝活体操」8種を、やる順番まで理学療法士がご紹介します。全部で6分半です。
なぜ「朝」に体操をするのか
寝ているあいだに、体は固まっている
人は寝ているあいだ、6時間から8時間ものあいだ、ほとんど同じ姿勢でいます。その間に関節を包む組織や筋肉は硬くなり、背中は丸まった状態で固定されます。朝いちばんの体は、一日でもっとも動きにくい状態だと考えてください。
その体のまま、いきなり歩き出したり、家事を始めたりするとどうなるか。関節が十分に動かないまま無理に動かすことになり、腰や膝に負担が集中します。朝に転倒や腰痛が起きやすいのには、こうした背景もあるのです。
「伸ばす → 動かす」の順番に意味がある
今回いちばんお伝えしたいのは、ストレッチを先に、運動を後にという順番です。
固まった筋肉をいきなり縮めようとすると、うまく力が入らないばかりか、痛めるもとになります。先に伸ばして関節が動く範囲を広げておくと、そのあとの運動で筋肉が本来の長さで働けるようになり、同じ運動でも効果が変わります。順番を変えるだけなので、手間はまったく増えません。
朝ごはんの前でも、後でも構いません。ご自身が続けやすいほうで大丈夫です。
【前半】ストレッチ4種
どれも20秒ずつ。反動をつけず、息を止めずに、じんわり伸ばします。「痛気持ちいい」より少し手前で止めるのがコツです。
① 肩回し(20秒)
椅子に腰かけ、両手を肩に置いて、ひじで大きく円を描きます。前回し・後ろ回しの両方を行いましょう。肩甲骨が動くのを感じられればじゅうぶんです。まず上半身から起こすことで、このあとの動作がしやすくなります。
② 体側伸ばし(20秒 × 左右)
椅子に座ったまま、片手を頭の上へ上げ、体を横に倒します。脇腹からわき腹の下あたりが伸びていればOKです。ここは呼吸に関わる部分でもあるので、伸ばしながら深く息を吸うと、胸が広がって目が覚めます。
③ ふくらはぎ伸ばし(20秒 × 左右)
椅子の背や机に手をつき、片足を大きく後ろへ引きます。後ろ足のかかとを床につけたまま、体重を前へ移動させましょう。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、血液を心臓へ送り返すポンプの役割をしています。朝いちばんにここをほぐしておくと、むくみや歩き出しのつまずきの予防になります。
④ もも裏伸ばし(20秒 × 左右)
椅子や低い台に片足のかかとを乗せ、背すじを伸ばしたまま、股関節から体を前へ倒します。背中を丸めないことが最大のポイントです。もも裏が硬いと骨盤が後ろへ傾き、猫背や腰痛の原因になります。
【後半】運動4種
ここからは30秒ずつ。回数は数えなくて構いません。時計を見ながら、自分のペースで動かしましょう。ふらつきが心配な方は、必ず椅子や壁など支えのある場所で行ってください。
⑤ つま先・かかと上げ(30秒)
椅子に座り、つま先を上げる・かかとを上げるを交互に繰り返します。すねとふくらはぎを同時に使う運動です。すねの筋肉が弱るとつま先が上がりにくくなり、わずかな段差でつまずくようになります。
⑥ 腿上げ(30秒)
座ったまま、左右のももを交互に持ち上げます。使うのは腸腰筋(ちょうようきん)という、足を前へ運ぶための筋肉。ここが弱ると歩幅が狭くなり、歩く速さが落ちます。高く上げる必要はなく、太ももが少し浮けばじゅうぶんです。
⑦ 椅子スクワット(30秒)
椅子から立ち上がる・座るを繰り返します。膝がつま先より前へ出すぎないよう、お尻を後ろへ引きながら座りましょう。立ち座りは日常でもっとも回数の多い動作であり、これができるかどうかが自立した生活を左右します。
⑧ 大股歩き(30秒)
最後は、部屋の中をいつもより大きな歩幅で歩きます。前の4種目で準備した筋肉を、実際の「歩く」という動作につなげる仕上げです。腕もいつもより大きく振ってみてください。歩幅を広げると、自然と姿勢も伸びます。
セルフチェック:朝の体、どれくらい固い?
体操を始める前に、今の状態を確かめてみましょう。道具はいりません。
- 壁立ち:かかと・お尻・背中を壁につけて立ったとき、後頭部が自然に壁につくか
- 前屈:座って足を前に伸ばし、無理なくつま先に手が届くか
- 片足立ち:目を開けたまま、片足で20秒立てるか(必ず支えのある場所で)
当てはまらない項目があっても、心配しなくて大丈夫です。どれも続ければ変わるものばかりですし、朝の体は誰でも固くなっています。何週間か続けたあと、もう一度確かめてみてください。
続けるための3つのコツ
毎日でなくていい。まずは週3日から
「毎日やらなければ」と決めてしまうと、一日できなかった時点でやめてしまいがちです。週3日から始めて、続いたら増やしましょう。
すでにやっていることにくっつける
「歯みがきのあと」「カーテンを開けたら」というように、毎朝必ずやることの直後に置くと、思い出さなくても続きます。時間を決めるより確実です。
痛みが出たら、その種目はとばす
我慢して続けるものではありません。痛みが出る種目はとばし、痛みが続く場合は医療機関にご相談ください。
まとめ
朝活体操8種を、もう一度おさらいします。
- ストレッチ:①肩回し(20秒)②体側伸ばし(20秒×左右)③ふくらはぎ伸ばし(20秒×左右)④もも裏伸ばし(20秒×左右)
- 運動:⑤つま先・かかと上げ(30秒)⑥腿上げ(30秒)⑦椅子スクワット(30秒)⑧大股歩き(30秒)
ポイントは「伸ばしてから、動かす」。固まった体をいきなり動かすより、ずっと安全で効果的です。全部で6分半、椅子ひとつあれば始められます。
動画では実際に一緒に体を動かせるよう、種目ごとにタイマーを表示しています。数を数える必要がないので、画面を見ながら真似するだけで6分半が終わります。ぜひご覧ください。
※ご注意
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。痛みが出る場合はすぐに中止してください。ふらつきのある方は、椅子や壁など支えのある場所で行ってください。
糖尿病のお薬やインスリンを使用されている方は、朝食前の運動で低血糖を起こすことがあります。朝食後に行うか、事前に主治医へご相談ください。
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この体操を「朝の流れ」のどこに置けばいいのかは、一生歩くためのモーニングルーティンで詳しくお話ししています。起きてからの30分の順番を知っておくと、この体操の効果がさらに高まります。
次回は「なぜ、歩けることが大切なのか」。方法ではなく理由の回です。歩けなくなって本当に困るのは足ではない、というお話をします。

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