前回の記事「いつまでも若い人の習慣5選」では、若く見える方がやっていることをお話ししました。今回はその逆です。
そして今回は、まったく違う角度からお話しします。前回が「足し算」だったのに対し、今回は「引き算」。何かを始めるのではなく、やめるだけの話です。
訪問リハビリの現場で見ていると、じつはこちらのほうが早く効きます。良いことを10個足すより、悪いことを1つやめるほうが確実なのです。
なぜ「やめる」ほうが効くのか
理由は2つあります。
ひとつ目は、始めなくていいから。 新しい運動を習慣にするのは大変です。時間も気力もいります。でも「やめる」なら、今日この瞬間からできます。準備がいりません。
ふたつ目は、ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでも進まないから。 せっかく体にいいことをしていても、老化を早める習慣が残っていれば打ち消されてしまいます。まずブレーキを外す。順番としてはこちらが先なのです。
習慣① タバコを吸っている
いろいろな健康法がありますが、老化を早める要因として、喫煙に勝るものはありません。
大規模な研究では、喫煙者と非喫煙者で平均寿命に約10年の差があると報告されています。しかも寿命だけの話ではなく、タバコは血管・肌・骨を同時に老けさせます。血流が落ち、シワが増え、骨密度も下がる。今回の5つのなかで、影響がいちばん広い習慣です。
やめた日から、体は戻り始める
ここからが大事な話です。やめた日から、体は戻り始めます。 数日で血流が改善し、数か月で呼吸が楽になってきます。何十年吸っていた方でも変化は出ます。「今さら遅い」ということはありません。
そしてもうひとつ。本数を減らすより、やめるほうが簡単です。「1日5本まで」と決めると、その5本のことを一日中考えることになり、かえってつらくなります。
ご自身で難しければ、禁煙外来という選択肢があります。お薬で楽になりますし、保険が使える場合もあります。
習慣② 食べる量を減らしている
意外に思われるかもしれませんが、高齢期は「痩せ」のほうが危険です。
国が示す目標では、65歳以上のBMIは21.5〜24.9が望ましいとされています。この「21.5」という下限が大事で、若い世代より高めに設定されています。つまり痩せすぎのほうが問題だということです。
やせは、筋肉から先に減る
体重が減るとき、脂肪だけが減ってくれればよいのですが、実際は筋肉から先に落ちていきます。
食事を減らす → 筋肉の材料が入らない → 筋肉が減る → 動きにくくなる → さらに食欲が落ちる。この流れに入ると、あっという間に低栄養です。免疫も落ち、傷も治りにくくなり、見た目にも一気に老けが出ます。
減らすのは「量」ではなく「塩と糖」
では何も気をつけなくていいのかというと、そうではありません。減らすべきは、量ではなく塩と糖です。醤油をかけすぎない、甘い飲み物を控える。そこを削って、たんぱく質はしっかり食べる。これが高齢期の正解です。
習慣③ 日光を浴びていない
一日中家にいる生活が続いていませんか。目安は1日15分。手や顔に日が当たるだけで十分です。
ビタミンDは、日光でつくられる
ビタミンDは食べ物からもとれますが、皮膚に日光が当たることでもつくられます。これがないと、いくらカルシウムをとっても吸収されません。骨がもろくなり、転んだときに折れやすくなります。
さらにビタミンDは筋力とも関係しており、不足すると足に力が入りにくくなることが分かっています。
朝の光が、夜の眠りをつくる
もうひとつ。朝に光を浴びると体内時計がリセットされ、その14〜16時間後に眠気を起こすホルモンが出るようセットされます。朝7時に光を浴びた方は、夜9〜11時ごろに自然と眠くなるわけです。
「夜眠れない」と悩んでいる方の多くは、原因が朝にあります。
習慣④ 口が開いている
テレビを見ているとき、口は閉じていますか。無意識にぽかんと開いている方は少なくありません。
健康な方は1日に1.5リットルほどの唾液を出しています。この唾液が口の中を洗い流し、細菌の繁殖を抑えています。ところが口を開けていると唾液が乾いてしまいます。
乾燥から、歯を失う
口の中が乾くと、虫歯と歯周病が一気に進みます。そして歯を失うと噛めなくなり、食べるものが偏ります。口元がしぼんで頬がこける——「一気に老けた」と言われる変化の正体は、ここだったりします。
対策はシンプルです。気づいたときに口を閉じる。 それだけです。繰り返すうちに、閉じているのが普通になってきます。
いびきがひどい方、朝起きたときに口がカラカラの方は、夜間も口が開いている可能性があります。一度、耳鼻科や歯科でご相談ください。
習慣⑤ 早食いをしている
食事を5分、10分で終えていませんか。早食いをすると血糖値が急激に上がります。
この急上昇が続くと、体の中で「糖化」という反応が起きます。糖がたんぱく質にくっつき、体が内側から焦げていくようなイメージです。この糖化でできる物質が、血管を硬くし、肌の弾力を奪います。
目安はひと口30回。実際にやってみると、かなり多く感じるはずです。
今日からできる2つ
- 野菜から先に食べる… 同じものを食べても、順番を変えるだけで血糖の上がり方がゆるやかになります
- テレビを消して食べる… 「ながら食い」をしていると噛む回数が自然に減ります。食事に集中すると噛む回数は増えます
よく噛むと満腹感が早く来るので、食べすぎも防げます。
セルフチェック:いくつ当てはまりますか
- タバコを吸っている(本数を減らしただけ、も含む)
- 健康のために食事の量を減らしている
- ほとんど外に出ない日が週に何日もある
- 気づくと口がぽかんと開いている
- 食事が10分以内に終わることが多い
全部やめる必要はありません。当てはまった項目こそ、いちばん変えやすい場所です。
今日から「やめる」3つのこと
- ながら食いをやめる… テレビを消して、噛むことに集中する
- 日中の口ぽかんをやめる… 気づいたら口を閉じて、鼻で呼吸する
- こもりっぱなしをやめる… 朝、15分だけ外に出る。ゴミ出しのついででも構いません
どれもお金がかからず、道具もいりません。持病のある方、治療中の方は、食事や禁煙の進め方について主治医にご相談ください。
まとめ
すぐに老ける人の習慣は、①タバコを吸っている ②食べる量を減らしている ③日光を浴びていない ④口が開いている ⑤早食いをしている——この5つでした。
現場でいちばんよく聞く言葉は「まだ大丈夫」です。そう言った方ほど、あとで困っておられました。逆に「今のうちに」と動いた方は間に合っていました。
ひとつやめるだけで、流れは変わります。
若い方が「やっていること」のほうが気になる方はいつまでも若い人の習慣5選を、歩く力を保ちたい方は一生歩ける人の特徴5選をどうぞ。体を動かしたい方には自宅でできる介護予防ドリル5選もあります。
参考資料
- Jha P, et al. 21st-century hazards of smoking and benefits of cessation. N Engl J Med. 2013
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」目標とするBMIの範囲
- ビタミンDと骨・筋力に関する各種報告
- 日本歯科医師会(唾液の役割と口腔乾燥)
※この記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたもので、特定の疾患の診断・治療に代わるものではありません。持病のある方、治療中の方は、食事内容や禁煙の進め方について必ず主治医へご相談ください。

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