「食事中にむせることが増えた」「最近、原因不明の発熱が続く」――そんなサインを見逃していませんか?
高齢者の肺炎の約7割は「誤嚥(ごえん)」が原因と言われています。そして、その予防に最も効果的な方法のひとつが、毎日の口腔ケアです。歯を磨くだけでは不十分?実は、正しいケアの方法を知るだけで、肺炎リスクを大きく下げられます。
まず結論:毎日の口腔ケアで肺炎リスクを約40〜50%下げられる
毎日の口腔ケアを正しく行うことで、誤嚥性肺炎のリスクを約40〜50%低減できるという研究報告があります。ブラッシング・舌ケア・唾液腺マッサージ・入れ歯の手入れ・専門家によるチェックの5つを習慣にしましょう。
誤嚥性肺炎とは?
誤嚥性肺炎とは、食べ物や飲み物、あるいは口の中の細菌が気管に入り込み、肺で炎症を起こす病気です。
日本呼吸器学会によると、70歳以上の肺炎患者の70%以上が誤嚥性肺炎と推定されています。特に睡眠中に、気づかないうちに唾液ごと細菌を吸い込む「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」が問題です。
リスクが高い人の特徴
- 食事中によくむせる
- 食後に声がかすれる(「ゴロゴロ」した声になる)
- 食事に時間がかかるようになった
- 口が乾きやすい(ドライマウス)
なぜ口腔ケアが重要なのか?
口の中には数百〜数千億もの細菌が存在しています。口腔ケアが不十分だと、これらの細菌が増殖し、誤嚥した際に肺炎の引き金になります。
米山武義らの研究(2001年)では、要介護高齢者に対して専門的口腔ケアを行ったグループは、行わなかったグループに比べて肺炎発症率が約40%低下したことが示されています。
今日から始める!5つの口腔ケア
① 正しいブラッシング
歯ブラシは鉛筆持ちで、力を入れすぎず、歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨きましょう。
- 1回2〜3分が目安
- 食後30分以内、就寝前は特に念入りに
- 毛先が広がったら交換(目安:1〜2ヶ月)
② 舌のケア(舌苔除去)
舌の表面に付いた白いコケ状のもの(舌苔)は細菌の温床です。専用の舌ブラシや柔らかいガーゼで、奥から手前にやさしく拭き取ります。強くこすりすぎると傷になるので注意。週に2〜3回でも効果的です。
③ 唾液腺マッサージ
唾液は口腔内の自浄作用があり、細菌の増殖を抑えます。唾液が少なくなるドライマウスは誤嚥リスクを高めます。1日1〜2回、食前がおすすめです。
- 耳下腺:耳の前、頬骨の下あたりを指3本でゆっくり円を描くように10回
- 顎下腺:あごの内側を親指で軽く押しながら耳に向かって5〜6回
- 舌下腺:あごの先の内側を両親指で押し上げるように10回
④ 入れ歯(義歯)のケア
入れ歯も細菌やカビ(カンジダ)が繁殖します。毎食後は流水で汚れを落とし、就寝時は外して義歯専用洗浄液につけましょう。入れ歯の裏側も忘れずに。
⚠️ 入れ歯を水に長時間つけっぱなしにすると変形の原因になります。洗浄液の使用時間を守りましょう。
⑤ 定期的な歯科受診
自宅ケアだけでは取り除けない歯石や、見えにくい場所の汚れは歯科医師・歯科衛生士に取り除いてもらいましょう。3〜6ヶ月に1回の定期検診が推奨されています。歯科への通院が難しい場合は訪問歯科診療も利用できます(要介護認定の有無にかかわらず利用可能な場合あり)。
こんなときは早めに受診を
口腔ケアを続けていても、以下の症状がある場合は医師や歯科医師に相談してください。
- 食事中・食後にひどくむせる
- 食後に発熱(37.5℃以上)が続く
- 体重が減ってきた
- 口の中に痛みや腫れがある
まとめ
誤嚥性肺炎は、高齢者の命に関わる重大な病気ですが、毎日の口腔ケアによって予防できる部分が大きいです。今日からできる5つのポイントをおさらいします。
| # | ケアの内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 正しいブラッシング | 歯と歯ぐきの境目を丁寧に |
| ② | 舌のケア | 舌苔を週2〜3回除去 |
| ③ | 唾液腺マッサージ | 食前に行って唾液を促す |
| ④ | 入れ歯のケア | 毎晩洗浄液につける |
| ⑤ | 定期的な歯科受診 | 3〜6ヶ月に1回 |
「お口の健康は、全身の健康につながる」――少しの習慣の積み重ねが、あなたやご家族を肺炎から守ります。
引用文献/参考文献
- 米山武義ほか「要介護老人に対する口腔ケアの肺炎予防効果」JAGS 2002; 50(3):430-433
- 日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2017」
- 厚生労働省「令和4年人口動態統計」(肺炎死亡統計)
- 日本歯科医師会「口腔保健と全身疾患に関するエビデンス(2020年版)」
- Yoneyama T, et al. “Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes.” Journal of the American Geriatrics Society. 2002.
- 厚生労働省老健局「介護予防マニュアル(改訂版)」2012年


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