「最近、息切れしやすい」「立ち上がるとふらっとする」「やる気が出ない」
この“なんとなく不調”を、年齢のせいで片付けてしまう人が多く、実はその原因は”貧血”かもしれません。
高齢者では、貧血(ヘモグロビン低下)がフレイル・転倒、そして死亡率上昇までも関連することが報告されています*1*2。
しかも、私の病院で入院してくるご高齢の方は、大半が貧血です。
今回は、私たちの体を知らないうちに蝕む”貧血”について、リスクとその対策についてまとめました。
まず結論
介護予防の観点では、「疲れやすい」「ふらつく」「ぼーっとすることが増えた」と感じたら、まず“貧血を疑って検査で確認する”のが合理的です。
貧血は原因が多様で、特に消化管出血を含む鉄欠乏性貧血や慢性炎症・腎機能低下などが背景にあることがあるため、“サプリで自己解決”より先に原因を特定することが大切です。
そもそも「貧血」とは
WHO(世界保健機構)の定義では、一般的に男性 Hb <13 g/dL、女性 Hb <12 g/dLの場合、貧血とされています。
貧血になると血液が運べる酸素が減り、疲労・息切れ・めまいなどの症状が出やすくなります。
なぜ貧血が「転倒・要介護リスク」につながるのか
貧血があると、
- 立ちくらみ(起立時のふらつき)
- 注意力・反応速度の低下
- 歩行の不安定化(疲れて足が上がりにくい)
が重なり、転倒の条件がそろいやすくなります。
実際に、入院高齢者では貧血が転倒リスクと関連するという報告があります*2。
また、貧血がフレイルや身体機能低下と関連するという報告も複数されています。
「貧血かも?」セルフチェック
次のうち 2つ以上当てはまれば、検査での確認をおすすめします。
- 最近、歩くのが遅くなった/すぐ休みたくなる
- 立ち上がりでふらつくことが増えた
- 階段や坂で息切れが強い
- 顔色が悪いと言われる/動悸がある
- 集中しにくい、ぼーっとする日が増えた
介護予防として最重要:まず「原因を探す」
高齢者の貧血は、原因が1つとは限りません。
特に鉄欠乏性貧血では、消化管からの出血が背景にある可能性があるため、原因検索が重要とされています。
成人の鉄欠乏性貧血の評価・対応は、消化管評価も含めてガイドラインで説明されています*3。
医療者に相談するときの“短い伝え方”
- 「最近ぼーっとして、ふらついて転びそう」
- 「息切れが増えた」
- 「食欲低下・体重減少がある」
- 「黒い便がある(あれば)」
この4点があると判断が速くなります。
今日からできる対策(安全な順)
① まずは検査(CBC)を“生活機能点検”として受ける
貧血は採血で確認でき、原因推定のために追加検査へ進めます(例:鉄関連、炎症、腎機能など)。
「疲れやすさ」を気合で乗り切るより、見える化が最短ルートです。
② 食事は「鉄+たんぱく質」を意識(ただしサプリは自己判断で使わない)
鉄の多い食品(例:赤身肉・魚・大豆・卵)に加え、全身の回復にはたんぱく質も重要です。
ただし、鉄欠乏かどうか分からない段階で鉄剤・サプリを常用すると、原因が隠れる/合わないケースもあるため、まず検査→必要なら補充が安全です。
③ 「ふらつき対策」を同時に入れる(転倒予防)
検査結果待ちでもできる介護予防として、
- 立ち上がりは「座位→一呼吸→立位」「軽く手足の運動してから立つ」
- 夜間の足元灯(トイレ導線)
- 水分不足の回避(脱水はふらつきを増やす)
を入れておくと事故を減らせます。
貧血が疑われる期間は“転倒しない設計”が特に重要です。
まとめ
高齢者の貧血は、単なる「血液の問題」ではなく、転倒・フレイル・生活機能低下につながり得る重要サインです。
- 疲れ・ふらつき・息切れが増えたら、まず採血で確認
- 自己流サプリより「原因の特定」が優先(鉄欠乏は消化管評価も重要)
- ふらつき対策(環境・動作)を同時に入れて転倒を防ぐ
「年のせいかな?」の裏に、介護予防で拾える“治せる原因”が隠れていることがあります。
貧血はその代表ですので、見逃さず対策を講じましょう。

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