「最近歩くのが遅くなった気がする」「同年代の人より歩くペースが遅い」
──そんな変化は、体力だけでなく「脳の健康状態」とも関係している可能性があります。
近年の研究では、歩行スピードが単なる足腰の指標ではなく、将来の認知機能低下や認知症リスクを予測する“早期サインの一つ”として注目されています。
なぜ「歩く速さ」が認知症リスクと関係するのか
歩行は、次のような多くの機能が同時に働いて成立する、非常に複雑な動作です。
- 足腰の筋力
- バランス・姿勢制御
- 反射・感覚
- 計画性や実行機能
- 注意力
- 2つ以上の作業を同時にこなす力(デュアルタスク処理)
複数の脳領域が連携しているため、脳の機能が少しずつ低下してくると、「物忘れ」として自覚するより前に「歩く速さの変化」として現れることがあります。
実際に、高齢者を長期間追跡した研究では、
- 歩行スピードが遅い人ほど、将来MCI(軽度認知障害)や認知症を発症しやすい
- 歩行スピードの低下は、目立った記憶力低下の数年前から始まっている場合がある
といった結果が報告されています。
一方で、「歩きが遅い=必ず認知症」というわけではなく、筋力低下や痛み、心疾患など、他の要因が関わることも多い点には注意が必要です。
年代別の歩行速度の目安とセルフチェック方法
自宅でできる歩行スピード測定法
- 4mの直線(廊下・玄関前など)を確保する
- 普段通りの「いつもの速さ」で4mを歩く
- 4mを歩くのにかかった時間(秒)を計測する
- 歩行スピード = 4(m) ÷ 秒数(m/秒)で計算
例:4mを4秒で歩いた → 4(m) ÷ 4(秒) = 1.0 m/秒
年代別の「おおよその目安」
※あくまで参考値であり、性別・身長・体格・地域・病気の有無などで大きく変わります。
- 60代:1.1〜1.2 m/秒前後(4mを約3.3〜3.6秒)
- 70代:1.0〜1.1 m/秒前後(4mを約3.6〜4.0秒)
- 80代:0.8〜0.9 m/秒前後(4mを約4.4〜5.0秒)
そして、こんな変化が続くときは注意してください。↓
- 昔より明らかに歩くのが遅くなった
- 歩幅が極端に小さくなった
- フラフラする・ふらつきが増えた
- 何もないところでつまずきやすくなった
「数値が少し遅い=すぐ病院」ではありませんが、「以前の自分と比べてどうか」が重要です。
気になる変化が続く場合は、かかりつけ医や理学療法士などに相談すると安心です。
認知症予防にもつながる「歩き方」のコツ3つ
1. 1日合計15分の「やや速歩き」
少し息が弾む程度の「やや速いペース」で歩くと、心肺機能や血流が高まり、脳の健康にも良い影響があると考えられています。
例:5分のやや速歩きを1日3回(通勤や買い物の行き帰りなどに挟む)。
長時間連続で歩けなくても、「細切れの合計15分」から始められます。
2. 手を大きく振って歩幅を広げる
肩甲骨から腕をしっかり振るイメージで歩くと、自然と歩幅が広がり、歩行スピードも上がりやすくなります。
上半身も使うことでエネルギー消費が増え、全身運動としてのウォーキング効果も高まります。
3. デュアルタスク歩行で「脳トレしながら歩く」
「歩きながら考える」ことで、前頭葉などの実行機能を刺激できます。
例:
- 歩きながらしりとりをする
- 今日の予定を声に出さずに順番に思い出す
- 100から3ずつ引き算をしていく(100, 97, 94…)
ポイントは「安全第一・短時間」です。
人通りが少なく、段差や車の少ない場所で、最初は30秒〜1分程度から試し、ふらつきや疲れがあればすぐにやめましょう。
転倒リスクが高い方や持病のある方は、専門家に相談してから取り入れると安心です。
まとめ:歩行速度は「脳と体の両方」をみる生活指標
歩行スピードは、加齢変化やフレイル、将来の認知機能低下リスクを知る“有力なサインの一つ”です。
特別な機器がなくても「4m歩行テスト」で自分の傾向を簡単にチェックできます。
「やや速歩き」「大きな腕振り」「安全なデュアルタスク歩行」を組み合わせることで、脳と体の両方に良い刺激を与えられますので、ぜひ試してみてください。
「何歩歩くか」だけでなく、「どんな速さで、どんな歩き方をしているか」を意識することが、これからの認知症予防・フレイル予防のキーワードになります。


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