「テレビの音が大きいと言われる」「会話の聞き返しが増えた」「外出先だと話が聞こえない」
この“聞こえにくさ”は、年齢のせいで済ませやすい一方、介護予防の視点では見逃せないサインです。
WHOの高齢者ケアの考え方でも、 聴力低下(難聴を含む) は、転倒や認知機能低下などと並ぶくらい重要な機能低下の一つとして扱われています*1。
今回は高齢者に多い”聞こえにくさ・難聴”について、介護予防の視点から、対策の必要性と改善策をまとめてみました。
まず結論
高齢者の聞こえにくさ対策は、
①耳あか・難聴の確認
②補聴器などの介入
③会話環境の調整
が基本対策となります。
聴力低下は、転倒・社会的孤立・認知機能低下などとも関連し*2、近年は「聞こえを整える介入」で転倒や社会的孤立の改善が示唆される報告も増えています*3*4。
なぜ「聞こえにくさ」が介護リスクになるのか
聞こえにくい状態が続くと、単に不便なだけでなく、次の悪循環が起こりやすくなります。
- 会話が疲れる → 人と会うのが減る
- 周囲の音が入りにくい → 注意が散る/危険察知が遅れる
- “聞き取ること”に集中しすぎる → 歩行やバランスへの注意が落ちる
NIA(米国国立老化研究所)も、聴力低下は社会的孤立や孤独、転倒リスク上昇と関連すると説明しています*5。
また、聴力は認知症予防の観点から重要視されており、Lancet 2024でも難聴は対策可能なリスク要因として扱われています*6。
見逃しやすい「聞こえ低下サイン」チェック
次のうち2つ以上あれば、介護予防として“聞こえの点検(メンテナンス)”をおすすめします。
- テレビの音量が以前より大きい
- 家族との会話で聞き返しが増えた
- 複数人の会話だと分かりにくい
- 外食や買い物先で聞き取りづらい
- 「返事が遅い」「話がかみ合わない」と言われる
- 電子レンジやインターホンの音に気づきにくい
まずは、自身の聴力低下に気づくことから始めてみましょう。
今日からできる「聞こえの介護予防」3ステップ
① まずは“耳あか”と“急な難聴”を見分ける
聞こえにくさの中には、耳あか(耳垢)の影響で悪化しているケースもあります。
NICEでは、耳あかが聴こえに影響している場合、除去することを推奨しています*7。
一方で、急に聞こえなくなった/急速に悪化した場合は、緊急性があることがあり、迅速な耳鼻咽喉科の受診を示しています。
② 補聴器は「聞こえ」だけでなく生活機能の介入
補聴器は“音を大きくする道具”というより、会話・外出・社会参加を維持する介入として考えると効果が見えやすくなります。
ランダム化比較試験では、補聴器を使うと、認知機能低下リスクが高いほど、認知低下の抑制効果があると示されました*8。
さらに、2025年の報告では、聴覚に関する教育や対策が社会的孤立・孤独の改善や、転倒減少の可能性にもつながることが示唆されています*9。
③ 会話環境を変える(これだけで疲れ方が変わる)
補聴器の有無にかかわらず、環境調整は効果が大きいです。
- 正面から話す(口元が見える)
- 一度に複数人で話さない
- テレビを消してから会話する
- 重要な話は、短く区切って確認しながら
これは、聞き取り負荷を下げて“会話の疲れ”を減らし、結果的に社会参加を保つ助けになります。
NIAでも、聴こえにくさが誤解や引きこもり、社会的孤立につながり得る点が強調されています。
4) 受診の目安(安全のため)
次がある場合は、早めに耳鼻科・聴覚評価をおすすめします。
- 急に聞こえが落ちた/急速に悪化した
- 片耳だけ聞こえにくい
- 耳鳴り・めまいを伴う
- 聞き間違いが増えて生活に支障がある
- 家族が「認知症かも」と感じている(実は難聴由来のこともある)
まとめ
高齢者の「聞こえにくい」は、転倒・孤立・認知機能低下につながりうる、介護予防の重要なテーマです。
- まずは耳あか・突然の異常を見分ける(急な悪化は早く受診)
- 補聴器などの介入は、聞こえだけでなく生活機能に関わる
- 会話環境の工夫で、疲労と孤立を減らせる
「聞こえにくさ」は、年のせいで我慢するより、早く整えた人ほど得をする介護予防です。
まずは耳の点検を行い、必要に応じて早めの対策を行いましょう。

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