高齢者の“薬の飲み忘れ・飲み間違い”を防ぐ実践的ヒント

認知・脳の健康

「気づいたら薬が余っていた」「あれ?さっき飲んだっけ?」

こうした“服薬ミス”は高齢者の日常で非常に多く見られます。

高齢者の「薬の飲み忘れ・飲み間違い」は、糖尿病や高血圧などのコントロール不良、転倒、入院リスクの上昇などにつながる重要な問題です。

しかし、記憶に頼らない仕組みづくりやテクノロジーの活用により、服薬ミスは大きく減らすことができます。


服薬ミスが起こりやすい主な理由

高齢者の服薬アドヒアランス(きちんと飲めているか)には、以下のような要因が複合的に関わります。

  • 記憶に依存した管理
    「見える場所に置いておく」「時間をなんとなく決めている」といった“記憶頼み”の方法は、加齢による注意力や記憶力の変化もあり、どうしてもミスが起こりやすくなります。
  • ポリファーマシー(多剤服用)
    一般に5剤以上の併用はポリファーマシーと呼ばれ、高齢者では非常に多くみられます。 薬の数や内服スケジュールが複雑になるほど、飲み忘れや服薬中断、さらには有害事象や入院のリスクが高まることが報告されています。
  • 軽度の認知機能低下
    認知症と診断されていなくても、注意力やワーキングメモリの低下、理解力の低下などが、服薬非アドヒアランスと関連することが示されています。

テクノロジーと行動デザインによる最新アプローチ

近年は、単に「気をつける」だけでなく、環境やツールを変えるアプローチが重視されています。

  • スマホアプリ・電子カレンダー・デジタルリマインダー
    高齢者を対象とした研究では、スマホやタブレット、電子デバイスによるリマインダー機能(通知・アラーム・確認ボタンなど)が、服薬アドヒアランスを有意に改善したと報告されています。
  • 行動科学を取り入れた「環境のデザイン」
    行動デザインの研究では、「考えなくても自然に正しい行動が起きる環境づくり」がエラー防止に有効とされています。

こうした工夫は、高齢者支援や介護予防の現場でも広がりつつあります。


明日からできる服薬ミス対策

記憶に頼らない「仕組み」をつくる

  • 曜日ごとの1週間分ピルケースを使い、「入っている=まだ」「空になっている=飲んだ」と一目でわかるようにする。
  • 朝・昼・夜で仕切られたブロック式ケースを用い、時間帯ごとに分けておく。
  • スマホが苦手な場合は、100円ショップのキッチンタイマーや市販の服薬アラームなど、シンプルなタイマー機器でも十分役立ちます。

日常行動とセットで習慣化する

  • 朝の薬:歯みがき用コップや洗面台の決まった位置に置く。
  • 昼の薬:食卓の自分の定位置、ランチョンマットの上など。
  • 夜の薬:パジャマや入浴後に使う保湿剤のそばなど。

毎日の決まった行動と薬を物理的に「セット」にすると、認知負荷が減り、自然とミスが減少しやすくなります。


薬が多いときは「減らせるか」を相談

ポリファーマシーと関連して、近年は不要な薬や重複処方を減らす「デポリファーマシー(脱ポリファーマシー)」が国際的に推進されています。

  • 医師や薬剤師に「薬が多くて管理が大変」「飲み忘れが心配」と率直に相談する。
  • 定期的な薬剤レビューで、優先度の低い薬や重複した薬を減らすことで、服薬負担や副作用、非アドヒアランスのリスクが軽減したとする報告があります。

服薬ミスは「性格」ではなく「環境」の問題

エビデンスからは、服薬ミスは単なる「注意不足」ではなく、加齢変化・多剤服用・複雑なレジメンといった“環境・状況要因”が大きく関わることが示されています。

  • 記憶に頼らない仕組みづくり
  • 生活行動と連動した配置・行動デザイン
  • ポリファーマシーの見直し(デポリファーマシー)

これらの「環境整備型の予防」を、高齢者本人だけでなく家族や介護者も一緒に取り入れることで、服薬の安全性と生活の安心感を高めることが期待できます。

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次回予告

次回は「高齢者の低栄養予防:やせていなくても要注意な“隠れ低栄養”とは?」をテーマに、高齢者の栄養状態のチェックポイントと、今日からできる具体的な予防策を解説します。

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