「低栄養」というと「痩せている高齢者」を思い浮かべやすいものの、近年は見た目が普通体型(BMIおおよそ18.5〜24.9)でも、筋肉量や体内の栄養状態が低下している“隠れ低栄養”が問題になっています。
日本の地域在住・在宅高齢者では、低栄養またはそのリスクを持つ人が2〜3割程度という報告もあり、転倒・フレイル・免疫力低下・入院リスクの上昇など健康への影響は小さくありません。
ここでは、研究知見をふまえて「痩せていないのに起こる低栄養」の特徴と、自宅でできる予防・チェック方法を解説します。
低栄養ってつまりどういう状態?
以前は「体重が少ない=低栄養」という見方が中心でしたが、現在は体重やBMIだけでは栄養状態を評価しきれないことがわかってきました。
BMIは標準でも、筋肉量が減り(サルコペニア)、血清アルブミン(栄養状態を示す代表的な血液データ)などの指標が低下し、エネルギーやたんぱく質が慢性的に不足している高齢者が少なくありません。
特にサルコペニアは筋肉量や筋力の評価が必要で、BMIだけでは検出しきれないため、「見た目ではわからない低栄養」として注意が必要です。
研究からわかる隠れ低栄養リスク
隠れ低栄養の背景には、次のような生活パターンが重なっていることが多いと報告されています。
- 1日のたんぱく質摂取量が不足している
65歳以上では、フレイル・サルコペニア予防の観点から、少なくとも体重1kgあたり1.0 g以上のたんぱく質摂取が推奨され、可能であれば1.2 g/kg/日程度まで増やすことも提案されています。 - 噛む力・飲み込む力の低下で食事量が減る
歯の状態や口腔乾燥、咀嚼力低下、嚥下障害(オーラルフレイル)は、低栄養やフレイルリスクの上昇と関連していることが示されています。 - 一人暮らし・独居で食事が単調になる
独居高齢者では調理の手間や食の単調さから、エネルギー・たんぱく質摂取が少なくなり、低栄養リスクが高まりやすいと報告されています。(※ただし、以下で紹介する実践ポイントの工夫で解消できます!)
自宅でできる隠れ低栄養セルフチェック
以下の項目のうち、3つ以上当てはまる場合は、かかりつけ医や管理栄養士に一度相談すると安心です。
- この1年で意図せず2〜3kg以上体重が減った
- 以前より疲れやすく、動くのがおっくうになった
- 肉・魚・卵・大豆製品を「ほぼ毎日」は食べていない
- 柔らかいもの・飲み込みやすいものばかり選んでいる
- 1日2食以下になる日がときどきある
- 食欲が落ちてきた、食べる量が減ってきた
- 握力が弱くなった、ペットボトルのふたが開けづらくなった
短期間でも、2〜3か月のあいだに2kg前後の体重減少が見られる場合、低栄養やサルコペニアを疑う“サインの一つ”として、早めに評価を受けることが推奨されます。
隠れ低栄養を防ぐ4つの実践ポイント
1. 「+1たんぱく質」を毎食意識
毎食「たんぱく質食品をあと1品足す」だけでも、1日のたんぱく質不足を補いやすくなります。
- 朝:ごはん+みそ汁に「ヨーグルト」か「ゆで卵」を追加
- 昼:麺類やパンに「ツナ缶」「牛乳」「チーズ」をプラス
- 夜:いつものおかずに「豆腐半丁」「納豆」「魚の缶詰」を足す
高齢者では、1食あたり25〜30 g程度の良質なたんぱく質をとることが筋肉量維持に望ましいとする報告もあり、小さな追加を積み重ねることが重要です。
2. オーラルフレイル対策で「噛む・飲み込む力」を守る
- 毎食後の歯みがき・義歯の清掃などの口腔ケア
- あまりに柔らかいものだけに偏らず、噛みごたえのある食品も無理のない範囲で取り入れる
- かかりつけ歯科での定期受診や、嚥下評価・口腔機能トレーニングの相談
嚥下機能や口腔機能の低下は、低栄養やフレイルと強く関係するため、口のケアは「栄養ケア」でもあります。
3. 「調理の手間ゼロ」高たんぱく食材を常備
調理の手間が少ないほど、在宅高齢者の食事量・栄養状態が保ちやすいことが示唆されています。
すぐに使える高たんぱく食材を常備しておくと、独居でも続けやすくなります。
- サバ缶・ツナ缶・焼き魚のレトルト
- 豆腐・厚揚げ・納豆
- 卵(レンジ茶碗蒸し・卵とじなど簡単料理)
- 牛乳・ヨーグルト・チーズ
- 冷凍の魚・鶏肉・大豆ミート
これらを主食(ごはん・パン・麺)にプラスするだけでも、エネルギーとたんぱく質のバランスが改善しやすくなります。
4. 「体重の微妙な変化」を毎週チェック
- 週1回、同じ条件で体重を測り、ノートやアプリに記録
- 数か月単位で、少しずつ体重が落ちていないか確認
高齢者では、急激でなくても持続的な体重減少が、サルコペニアや低栄養、死亡リスクの上昇と関連することが報告されています。
体重の小さな変化を早くつかむことで、フレイルや介護リスクを未然に減らすことが期待できます。
まとめ:普通体型でも低栄養を疑う視点を
隠れ低栄養は、「体重が少ない人」だけでなく、「BMIが標準の高齢者」でも起こる重要な課題です。
毎食+1品のたんぱく質、オーラルフレイル対策、手間の少ない高たんぱく食材の活用、週1回の体重チェックといった小さな工夫の積み重ねが、フレイル予防と介護予防につながります。

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次回予告
次回は、「脳の“疲労”は転倒とも関係する? 近年注目の『認知的疲労』と介護予防」をテーマにお届けします。


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