はじめに:冬の「ちょい寒」が命を縮める?
冬になると、誰でも「冷えると体にこたえる」と感じますが、高齢者では寒さによる血圧の急上昇やヒートショックが心筋梗塞・脳卒中・入浴中の急変につながるリスクが高くなります。
日本では、浴槽内での溺死や急変が冬季に増加し、その一因として「暖かい居間」と「冷えた浴室・脱衣所」の温度差が指摘されています。
なぜ冬は危ない?寒さと血圧・心臓への負担
寒さを感じると、体温を守るために皮膚の血管が収縮し、血圧が上昇しやすくなり、心臓の負担も増えます。
特に高齢者は血管の弾力性が低下し、自律神経の調整機能も弱くなるため、室温の低下や温度差の影響を受けやすく、冬季には血圧の変動が大きくなりがちです。
ヒートショックは浴室・脱衣所・トイレで多い
ヒートショックは、暖かい部屋から寒い浴室や脱衣所・トイレに移動した際の急激な温度変化で血圧が急上昇または急低下し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす現象です。
日本では高齢者の入浴中の死亡が冬に集中しており、浴室や脱衣所をあらかじめ暖めて温度差を小さくすることが予防策として強く提案されています。
室温18℃が目安:寒い家は血圧と心臓に危険
公衆衛生機関や専門家は、高齢者などの住環境では「少なくとも18℃以上の室温」を保つことを健康上の目安として推奨しています。
室内温度が18℃未満の住まいでは、高血圧や心血管疾患のリスクが高くなることが報告されており、特に冬の冷え込む季節には室温管理が重要です。
- 寝室:おおむね18℃以上を目安
- リビング:20〜22℃程度の快適な温度帯を意識
- 脱衣所・トイレ:できるだけ15〜18℃程度まで暖め、極端な温度差を避ける
朝のモーニングサージを抑える「ゆっくり起床」
朝はもともと血圧が上がりやすい時間帯であり、冬の冷え込みが加わると早朝や起床時の血圧急上昇(モーニングサージ)が強まり、心血管イベントのリスクが高まることが報告されています。
起床時には、いきなり布団から飛び起きるのではなく、布団の中で手足や首・肩・足首をゆっくり動かしてから、時間をかけて起き上がることで、急な血圧上昇を抑える一助となります。
「冷える姿勢」を避けて転倒リスクを下げる
長時間のあぐらや長座、足を冷やしたままの座位は下肢の血流を悪くし、筋肉のこわばりや痛みにつながりやすくなります。
特に高齢者では、下半身の冷えや筋肉のこわばりが歩行の安定性を低下させ、転倒や骨折のリスクを高めるため、膝掛けやレッグウォーマーなどで膝から下を保温し、外出時には首・手首・足首を優先的に温める工夫が有効です。
冬の食事ポイント:「温かい×たんぱく質」を意識
冬は体温維持のためのエネルギー消費が増えやすく、冷えや活動量低下から食欲が落ちる高齢者も少なくありません。
具だくさんの味噌汁や豚汁、けんちん汁などの温かい汁物に、魚・肉・卵・豆腐などのたんぱく質源を1品プラスすることで、体を温めながら、筋肉量維持に必要なたんぱく質とエネルギーをとりやすくなります。
また、高齢者では、体重1kgあたり1.0〜1.2g程度のたんぱく質摂取や、各食事で十分量の良質なたんぱく質をとることが推奨されており、温かい料理に組み込むと実践しやすくなります。
まとめ:冬の介護予防で押さえたい3つのポイント
- 室温はおおむね18℃以上を目安にし、特に脱衣所・浴室・トイレなどの寒さ対策を優先する
- 冬の朝は布団の中での軽い手足の運動など「ゆっくり起きる習慣」で、血圧の急上昇を和らげる
- 下半身や首・手首・足首を冷やさない衣類・姿勢と、温かくてたんぱく質を含む食事で、冷え・転倒・フレイルを予防する
これらの「冬の環境ケア」と生活習慣の工夫により、高齢者の血圧変動やヒートショック、転倒のリスクを減らし、健康寿命の延伸にもつながることが期待できます。
次回予告
冬の寒さは血圧やヒートショックだけでなく、睡眠の質や活動量の低下を通じて「脳のはたらき(認知機能)」にも影響すると考えられており、次回は「冬と認知機能低下の関係」と、その予防につながる生活習慣について詳しく解説する予定です。


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