「食事は早い方だ」と思っている方、実はそれがフレイル(虚弱)への第一歩かもしれません。
よく噛むことは、単に消化を助けるだけでなく、脳・筋肉・代謝・心をすべて刺激する“全身運動”です。
今回は、「噛む力」と健康寿命の深い関係を科学的にひもときます。
「噛む力」が健康を左右する理由
噛む回数が多い人ほど、体の老化速度が遅い傾向にあるという研究結果があります。
東京医科歯科大学を含む複数の研究では、咀嚼機能の低下がフレイルや筋力低下の指標と関連することが示されており、
噛む力が弱い高齢者は、
- 筋肉量が減少する
- 歩行速度が遅くなる
- 食事量が少なく、低栄養リスクが高くなる
という傾向がありました。
つまり、「噛む力」は食べる力+動く力+生きる力を支える基礎体力なのです。

オーラルフレイル(口の衰え)は、介護リスクのサインなのです!
早食いが招く「サイレント・メタボ」
「忙しいから」「つい習慣で」──早食いの人は多いですが、じつはこの習慣が、内臓脂肪の蓄積と糖代謝の悪化を引き起こします。
早稲田大学と花王の共同研究(2023年)によると、ゆっくり食べた場合に比べて早食いでは、
食後血糖値が高くなることがわかっています。
そして、満腹ホルモン(レプチン)の分泌が遅れてしまいます。
その結果──
- 食べすぎ
- 血糖値スパイク(※)
- 睡眠の質低下
へとつながり、生活習慣病からフレイルへの連鎖が起こるのです。
※血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急激に低下する状態のことです。この状態は、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞などの発症リスクにつながります。
よく噛むことで得られる“3つの健康効果”
🧠① 脳の活性化
噛む刺激は、脳の「海馬(記憶)」や「前頭前野(判断力)」を活性化します。
よく噛む人は認知症リスクが低いという報告もあり、噛む=脳トレなのです。
💪② 筋肉と代謝の維持
噛むことで“咬筋”や“首回りの筋肉”が働き、姿勢保持や呼吸にもよい影響を与えます。
また、よく噛んだ後には副交感神経を介して代謝が促進され、筋肉の栄養吸収もアップします。
❤️③ 心の安定とストレス軽減
ガムを噛むと落ち着く──これは科学的に正しいとされています。
噛むことでストレスホルモン(コルチゾール)が下がり、リズム運動によってリラックス効果が生まれます。
今日からできる“噛むトレーニング”
🍎1)噛みごたえ食材を1品足す
→ 例:レンコン、きんぴらごぼう、するめ、りんごの皮つき など
🥢2)「30回噛む」を目安に
→ 最初は数えながら、習慣になれば自然とゆっくりに。
😄3)食事中の“姿勢”を正す
→ 前かがみや猫背だと、下顎の動きが制限されて噛みづらくなります。
「噛む」を生活習慣に変えるコツ
食事のたびに「噛む回数を増やそう」と思うのは大変ですが、「食卓に歯ごたえのある一品を置く」だけで十分です。
たとえば──
- 朝食にりんご
- 昼食に玄米ごはん
- 夕食に野菜炒め
といった“プチ噛みチャレンジ”で、自然に口の筋肉が鍛えられます。
まとめ
よく噛むことは、薬でも運動でもない「最も身近な介護予防」です。
噛むほどに脳が動き、筋肉が働き、代謝が整う。
“一口を大切にする”ことが、未来の自立を守る力になります。
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次回予告
次回は、「脳を鍛える新常識」──“考える力”がフレイルを遠ざけるをテーマに、認知機能と身体機能のつながりを最新研究から紹介します。


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