冬になると「集中しにくい」「物忘れが増えた気がする」と感じる高齢者は少なくありません。
最近の研究では、高齢者の認知機能が夏・秋に比べて冬・春に低下しやすい“季節変動”が報告されており、冬は脳にとって負担のかかりやすい時期である可能性が指摘されています。
今回は、冬に認知機能が落ちやすいと考えられる要因と、高齢者の「冬の物忘れ・ぼんやり感」を和らげる具体的な介護予防のコツを紹介します。
冬に認知機能が落ちやすいと考えられる4つの要因
- 日照時間の減少と体内時計・覚醒リズムの乱れ
冬は日照時間が短くなり、光を浴びる時間が減ることで、体内時計や睡眠・覚醒リズムが乱れやすくなります。 - 冬の運動不足と脳血流の低下
寒さのため外出や歩行が減ると、全身の血流だけでなく脳への血流も低下しやすくなります。 特に判断力や注意力に関わる前頭葉は血流の影響を受けやすく、活動量の低下が続くと、反応速度や注意力の低下と関連する可能性が指摘されています。 - 室温・寒さと注意力の低下
高齢者を対象とした研究では、自宅の室温がおおよそ20〜24℃の範囲にあるときに注意力の問題が少なく、それより高すぎても低すぎても注意力が落ちることが報告されています。 - 社会的な孤立・刺激の減少
冬は外出や人との交流が減りやすく、社会的な孤立や刺激の不足が生じやすい季節です。 高齢者では、活動量や社会参加の低下が脳由来神経栄養因子(BDNF)の低下や認知機能低下と関連することが報告されており、冬の「出かけない・話さない」状態が脳にとって不利な条件になり得ます。
冬の認知機能低下を防ぐ5つの生活習慣
1. 朝の「光浴」で体内時計と脳をリセット
朝起きたらまずカーテンを開け、10〜15分程度、できる範囲で自然光を浴びる習慣をつけましょう。
曇りの日の屋外光でも室内照明よりはるかに強く、睡眠・覚醒リズムの調整や、日中の眠気・注意力の改善に役立つ可能性があります。
- 起床後すぐに窓辺で過ごす
- 可能であれば午前中に短時間の外出を取り入れる
光環境を整えることは、高齢者の睡眠や日中の認知機能のサポートに役立つ対策のひとつです。
2. 「室内ウォーク」と小さな動きで脳血流アップ
寒い日は無理に外に出なくても、家の中での「こまめな動き」を意識することがポイントです。
- 家の中をゆっくり3〜5分歩く
- 椅子からの立ち座りを数回繰り返す
- 踏み台昇降やその場足踏みを数分行う
高齢者においても、日常的な身体活動量が多いほど認知機能の維持に役立つ可能性が報告されており、「運動しなきゃ」より「こまめに動く」を目標にすることが現実的です。
3. 室温20〜24℃前後を目安に「脳にやさしい室内環境」をつくる
冬場のリビングや早朝のキッチンなどは、思っている以上に室温が下がっていることがあります。
研究では、高齢者の自宅での注意力の問題が少なかった室温の目安として、約20〜24℃の範囲が示されており、この範囲から大きく外れると注意困難のリスクが2倍になると報告されています。
- 暖房のオンオフだけでなく、設定温度と室温計を確認する
- 足元の冷え対策や部屋間の温度差にも配慮する
「少し寒いけれど我慢する」という状態が続くと、体調だけでなく注意力や判断力にも影響する可能性があるため、冬の室温管理は介護予防の視点でも重要です。
4. 「冬の脳活会話」で社会的な刺激をキープ
会話や社会的交流は、高齢者の認知機能を守る要素として多くの研究で注目されています。
- 1日5〜10分でも家族と相談ごとや予定の話をする
- テレビやニュースの感想を言葉にする
- 買い物や通院時に店員・スタッフと一言でも会話する
冬は外出が減って刺激が少なくなりがちですが、意識的に会話の量を保つことで、脳への社会的刺激を維持しやすくなります。
5. 冬に摂りたい「脳とからだを支える栄養」
食事だけで認知症を防げるわけではありませんが、脳とからだの健康に必要な栄養を不足させないことは大切です。
- 魚:DHA・EPAなどの脂肪酸は、心血管と脳の健康との関連が報告されています。
- 卵:コリンなど、神経伝達物質の材料となる栄養素を含みます。
- 発酵食品・具だくさんのみそ汁:温かさで体を温めつつ、バランスの良い食事の一部として活用しやすいメニューです。
- きのこ・魚・卵など:日照不足になりやすい冬は、ビタミンDの欠乏を防ぐことが骨や筋肉だけでなく全身の健康維持に重要とされています。
これらを無理のない範囲で1品プラスするイメージで取り入れ、エネルギー・たんぱく質・ビタミン・ミネラルが過不足なく摂れるよう意識すると、冬の体調と活動量の維持にもつながります。
まとめ:冬の高齢者の「物忘れ・ぼんやり感」への向き合い方
冬は、日照不足・運動不足・寒さ・社会的孤立など、複数の要因が重なりやすく、高齢者の認知機能にとって負担の大きい季節と考えられます。
ただし、季節による揺らぎと、病気による認知症の進行は異なるため、「冬だから仕方ない」と決めつけず、気になる変化が続く場合は早めに専門職へ相談することも大切です。
日々の暮らしの中で、「朝の光」「こまめな動き」「適切な室温」「会話」「バランスの良い食事」を組み合わせることで、冬でもできる範囲で脳のパフォーマンスを支え、認知機能低下のリスクを減らす手助けが期待できます。


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