高齢者の「寝すぎ」は良くない!介護予防に重要な”適正睡眠”の考え方とは

睡眠

 「健康のために、できるだけ長く寝たほうがいい」そう考えていませんか?

 近年の複数の疫学研究では、「極端に短い睡眠だけでなく、長すぎる睡眠時間も高齢者の認知症や死亡リスクの上昇と関連する」ことが明らかになっています(国立がん研究センター)。

 睡眠は「長ければ長いほど良い」というものではなく、量と同じくらい質や生活リズムが重要です。

 介護予防の視点から、本当に「体にいい眠り」とは何かを考えてみましょう。


結論:大切なのは「長さ」より「リズム」

 高齢者にとって理想的な睡眠の秘訣は、「起きている時間の質」と生活リズムの安定にあります。

 以下のような状態が重なると、サルコペニア(筋肉量・筋力の低下)や認知機能低下、抑うつ傾向などと関連し、自立した生活を続けにくくなる可能性が指摘されています。

  • 長時間、布団やベッドで過ごす(床上時間が8時間以上)
  • 昼夜逆転の生活パターン
  • 日中の活動量の低下

 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、高齢者について「床上時間(ベッドで過ごす時間)をおおむね8時間以内にする」ことが推奨されています。


なぜ「寝すぎ」がリスクになるのか

① 「動かない時間」が筋力を奪う

 長時間、横になって過ごすと、立つ・歩くといった活動の機会が減り、特に下肢筋力の低下が進みやすくなります。

 研究によれば、絶対安静の状態では1週間で10〜15%の筋力低下が起こるとされています(健康長寿ネット)。

 高齢者では、2週間の床上安静でさえ下肢の筋肉が2割も萎縮するともいわれています。

② 体内時計の乱れが、心身を衰えさせる

 「昼近くまで寝る・夜は眠れずに寝床でだらだら過ごす」といった生活は、体内時計や自律神経のリズムを乱しやすくなります

 その結果、

  • 食欲低下や便秘
  • 日中のだるさ
  • 気分の落ち込み

 などが出やすくなり、活動量のさらなる低下と生活の質の低下につながる可能性があります。

③ 脳への刺激が不足する

 「長く寝ている・ベッドで過ごす時間が長い」背景には、社会的な役割の減少や人との交流の機会減少が隠れていることも多いとされています。

 会話や外出などの刺激が少ない生活は、認知機能低下やうつ傾向と関連することが報告されており、「寝すぎ+不活動+社会的孤立」の組み合わせは認知症リスクを押し上げる要因になり得ます(順天堂大学研究を参考)。


介護予防の視点で見る「理想的な睡眠」

 厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、

  • 高齢者: 床上時間をおおむね8時間以内にする
  • 成人: 少なくとも6時間以上の睡眠確保が目安

 複数の疫学研究でも、約6〜8時間の睡眠をとる高齢者で、認知症や死亡リスクが比較的低い傾向がみられ、5時間未満や10時間以上といった極端な睡眠はリスク上昇と関連することが示されています(国立がん研究センター)


今日からできる「睡眠の質」向上アクション

1. 起床時間を固定する

 「眠れなかったから今日は遅くまで寝ていよう」という調整は、かえって体内時計を乱しやすくなります。

 眠気が残っていても、決めた時間にカーテンを開けて光を浴びることが、安定したリズムづくりにつながります。

2. 午前中に「外に出る理由」を作る

 散歩や買い物、庭の手入れなど、午前中の日光と軽い運動は、夜の自然な眠気を促し、睡眠の質向上に役立つとされています。

3. 「眠くなってから」布団に入る

 「○時になったからとりあえず布団へ」という習慣は、眠れない時間を長くしてしまい、布団=覚醒・不安の場所という学習につながります。

 眠気がしっかり出るまではリビングでリラックスして過ごし、眠くなってから寝室に向かうほうが、入眠しやすいとされています。


まとめ

 高齢者の睡眠では、「できるだけ長く寝る」ことよりも「日中を元気に活動し、リズムよく過ごすこと」を優先する方が、介護予防の観点から理にかなっています。

 覚えておきたいポイント:

  • 睡眠は「質」と「リズム」が最優先
  • 「寝すぎ」はしばしば「活動量低下」や体調変化のサイン
  • 日中の適度な活動と社会参加が、夜の自然な眠りを支える

 「最近、寝てばかりで元気がないな」と感じたら、まずは「明日の朝、何時に起きて、午前中に何をするか」を決めることから始めてみてください。

 小さな生活リズムの整えが、そのまま介護予防の一歩になります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました